今回の本は『灸療閑話』という本から症例を解説していきます。
灸療閑話 第1巻 福島哲也著 P12
福島哲也先生は深谷灸の入江靖二先生の患者さんで灸の素晴らしさに触れ、鍼灸師になられた深谷灸を継承されている先生です。
めまい灸の実際
Oさん、75歳、女性
「3日前にインフルエンザの注射をしたら、その日の晩からめまいが出て、フワフワして起き上がれなくなっちゃったの」とのこと。
「病院に入ったの?」と尋ねると、
「前の先生(Oさん宅と道路を挟んで真向かいにかかりつけの内科クリニックがある)に診てもらったら、
注射の後にこうなる人もたまにいるんだって。めまいの薬を飲んでるんだけど、治りゃしないわ」と愚痴をこぼしながら、
「今日で寝たきり老人3日もやってるのよ!ヤダねぇ~」と状況を説明してくれた。
まずは望診:印堂あたりが白っぽい。口唇が乾燥。やや紫暗色。
脈:やや遅、沈で弱い。
腹診:腹部全体に緊張あり。
手足が冷たい(特に各指)。
印堂あたりが白っぽい。
前額部辺りは陽明経の支配部位なので陽明経の陽気が少なくなって冷えていると考えられる。
口唇が乾燥。やや紫暗色。
口唇が乾燥している場合や口渇がある場合は、水を飲むかどうかを聞く必要がある。
口が渇いて水をよく飲む場合であれば、胸に熱が多くなっている。
口が渇いても水をあまり飲まなく潤す程度でよい場合は体は冷えている。
また冷たい飲み物がよいか、温かい飲み物がよいかも聞いておくとよい。
口唇が紫暗色というのは、お血により血液の流れが悪くなっているときに見られる色である。
脈:やや遅、沈で弱い。
遅で弱の場合は、冷えと水の停滞があることを現す。
沈は陽気が少なくなっているか、表面に余分な水分がある場合に現れる脈。
腹診:腹部全体に緊張あり。
これについては後で説明する。
手足が冷たい(特に各指)。
四肢厥冷は脾臓が弱ったとき特有の症状である。
考察
まずは脈の遅沈弱から陽気が不足していることがうかがえる。
それも印堂あたりの白っぽさから陽明経の陽気が不足してしまっている。
陽明経の陽気が不足しているということは、どこかの臓が弱ってしまっているということだが、もっとも考えられるのが陽明胃経の裏である脾臓である。
四肢厥冷があることから、脾臓が弱っていることが分かる。
最初はインフルエンザの注射をしたということだが、もともと脾臓の精気が不足しており、注射という強い刺激を与えたせいで陽気が飛んで少なくなってしまった。
もともと元気ならそれくらいはどうってことないのだが、何らかの理由で脾臓の元気が弱くなっていたために、その飛んでしまった陽気を回復させる体力がない。
治療をして後でしんどくなるとか、悪くなったとかいう人はもともと何らかの理由でどこかが弱っているのである。
気を付けなくてはならない。
で表裏関係で密接な脾臓の表である胃の経絡の陽明経の陽気が飛んでしまい回復できない。
頭をめぐる陽明経の陽気が不足してしまったためにめまいを起こしたと考えられる。
口唇が乾燥しているが中は冷えているためにあまり水は欲しがらないと考えられる。
口唇がやや紫暗色というのは全体的に考えて関連がないのでここでは無視する。
また腹診に関しても脾虚で中脘の抵抗があったものと考えられる。
胃が冷えているので胃の周りにめぐらない水(痰飲)が停滞していると考えられ、そのためにみぞおちの部分にも抵抗が出きて広い範囲に抵抗があったと考えられる。
治療としては福島先生は、内関に金のテイ鍼、三陰交のテイ鍼、霊台に多壮灸、中央厲兌に灸右5壮、左3壮の一回で治している。
内関は命門の火を増やして胃を働かせるため、三陰交は脾経を補って弱った脾臓の働きを上げるため、霊台は心臓に関係するために反応が出たと考えられる。
厲兌は陽明胃経で金穴であり陽明経の陽気をめぐらすために使用したと考えられる。
また厲兌はめまいの特効穴としても知られるが、脾虚のめまいの時でないと効果はないだろう。
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